- 研究紹介
公開日:2023/11/16
人間情報工学科の泉教授らの研究チームが文部科学大臣賞を受賞しました
文理融合学部人間情報工学科の泉隆教授らの研究チームが開発した「電気式人工喉頭」(特許第4940408号)がこのほど、「令和5年度北海道地方発明表彰」(主催:公益社団法人発明協会、一般社団法人北海道発明協会)の文部科学大臣賞を受賞しました。全国8地区に分けて行われている地方発明表彰は、発明の奨励・育成を図り、科学技術の向上と地域産業の振興に寄与することが目的。10月26日に北海道・グランドパーク小樽で表彰式が開かれ、泉教授と木之内均熊本キャンパス長が表彰状と盾を受け取りました。
人間は喉頭内部の声帯で音声の原音を生成し、口や舌の動きで音色を変化させて発話しており、喉頭がんによる喉頭摘出などは声を失うことにつながります。そこで泉教授は北海道東海大学(現・東海大学札幌キャンパス)に着任した1993年度から、地方独立行政法人北海道立総合研究機構や電制コムテック株式会社などと連携して電気式人工喉頭の研究に着手。特許も取得した技術を使って、1998年に第一医科株式会社から販売された世界初の抑揚付き電気人工喉頭「ユアトーン」を開発してきました。その後、音声が人工的で不自然であるという課題の解決に向けた改良を続け、人間の音声に含まれる微妙な「揺らぎ」が自然性の向上につながるとの研究成果から具体的な仕組みを考案。今年1月からは操作が簡単な「標準型S-2モデル」と声の高低を変更できる「高機能型G-2モデル」が販売されています。
ユアトーンは声帯の代わりに振動音を作り出し、喉元に当て、口を「あ」「い」「う」と動かすとその音声を発する仕組みです。現行の高機能型はスライド式スイッチを動かすことで抑揚をつけられ、同音異義語でも区別して発声でき、語尾で疑問形を表現することも可能になっています。泉教授は、「改良に当たっては喉頭摘出患者の会などにも足を運び、患者の意見を大切にしてきました。喉頭を摘出した人だけでなく、気管切開や麻痺、ALS、筋ジストロフィーなどで話せない人にとっての選択肢の一つになればと考えています。最新のモデルは登録された歌詞に合わせてボタンを押すと、あらかじめ設定されている音程に合わせて歌うこともできるようになっており、エンターテインメント性も大切にしています」とコメント。学生たちに向けては、「普及が進む中で見えてくることがありますから、何事も思い付きでいいので取り組んでみてください。外から見ているのではなく当事者に体当たりして、ダメ出しされても、失敗しても諦めることなく、2度、3度と挑戦することが大切。若いうちから失敗を恐れていてはもったいない。人との出会い、失敗から学ぶことが成功の秘訣です」とメッセージを送りました。