次世代研究創成拠点がイラン医科大学の研究者を招いてセミナーを開催しました


次世代研究創成拠点(Center for Next-Generation Research=CNGR)が1030日に、湘南キャンパスでセミナーを開催しました。イラン医科大学ファイブセンシズヘルス研究所准教授で、放射線生物学や放射線腫瘍学の研究に従事するタキザーデ・フェサーリ・ファルザード氏が講演。オンラインも併用し、CNGRをはじめ医学部や工学部、理学部の研究者ら多数が参加しました。 

CNGRは、特色ある研究を推進する学内の3つの研究機関「マイクロ・ナノ研究開発センター(MNTC)」「総合医学研究所」「先進生命科学研究所」の合同拠点として今年1月に設置。医学や理学、工学、AI、情報学、経済学など多様な分野を横断する独創的で学術的価値の高い研究を推進し、その成果を実用化につなげるとともに、若手研究者や研究支援人材を育成するための取り組みを進めています。セミナーはその一環として、本学国際原子力研究所の協力を得て実施したものです。 

 

はじめにMNTCの喜多理王所長(理学部物理学科教授)があいさつし、タキザーデ氏を紹介。続いてタキザーデ氏が、「“Reinforcement” by Tumor Microenvironment:The Seventh“R”of  Radiobiology”(腫瘍微小環境による「強化」:放射線生物学の7番目の「R」)」をテーマに講演しました。

 

タキザーデ氏ははじめに、放射線が生物に与える影響を個体や細胞、分子レベルで解明する放射線生物学の概要について解説。続いて、有効ながんの治療法として放射線が利用されている一方、がん細胞の一部が放射線に対する耐性を示し、治療効果に影響を及ぼすことが課題であると説明しました。さらに、放射線生物学に関する最先端の文献から、その要因が「R」から始まる6つのワード(Regeneration:再生、Repair:修復、Reoxygenation:再酸素化、Redistribution:再分布、Radiosensitivity:放射線感受性、Reactivation:再活性化)で示されることを紹介。最後に、自身が論文発表した7つ目のRReinforcement:強化」として、がん細胞の周囲を取り巻く腫瘍微小環境が放射線耐性に寄与するメカニズムについて解説し、「腫瘍微小環境へのアプローチによってがん細胞の放射線に対する感受性を高め、治療効果を改善できる可能性があると考えます」と語りました。終了後には、参加者と活発な質疑応答を交わしました。