人間環境学科の開講科目「エシカル消費論」で学外講師による特別講義を実施しました


教養学部人間環境学科の開講科目「エシカル消費論」(担当教員=岩本泰教授)で5月16日と23日に、環境・社会問題の解決に向けてサステナブル素材のコンサルティングや普及に取り組む一般社団法人M.S.I.の稲垣貢哉氏を学外講師に招いて繊維産業に関する特別講義を実施しました。この授業は、持続可能な社会づくりに向けて具体的な消費行動を構想する能力を養うことが目的で、主に製品が原材料の調達から製造・流通・販売・消費・廃棄されるまでの過程を指す「製品ライフサイクル」についても学んでいます。

 

稲垣氏は、環境や社会・人権に配慮した繊維素材の普及を進めるための8つの認証制度を策定・運営する米NPO「テキスタイルエクスチェンジ」のアジア地区アンバサダーを務めるなど、繊維産業のサステナビリティに関わる国際動向に精通しています。16日の講義では世界の繊維産業界における環境問題や人権問題に触れ、2013年にバングラデシュで起きた劣悪な労働環境の放置によるアパレル工場の崩壊事故(ラナ・プラザ崩落事故)について解説。「こうした事故を繰り返さないためには、事業者と消費者双方がエシカル(倫理的)でサステナブル(持続可能)なファッションのあり方を模索していく必要があります」と語りかけました。また、近年需要が高まっているオーガニックコットン(有機栽培綿)について、原綿価格の高騰と、労働者に適切な賃金が支払われていないアンバランスな実情を解説し、自身が視察したインドの綿花農家の声を紹介しました。

 

23日には、アパレルブランドの取り組みに焦点を当て、「テキスタイルエクスチェンジ」が年に1回開催する国際会議「サステナブルカンファレンス」について紹介。「日本からは旭化成、ファーストリテイリング、M.S.I.などが参加しています」と説明し、学生が日ごろから商品を購入しているいくつかのアパレルブランドを例に挙げ、環境保全活動や労働者の人権保護、フェアトレード、服の修繕など各社が展開するサステナブルな取り組みを解説しました。また、こうした取り組みが遅れている企業の実態例にも触れ、「洋服を買うためにお金を支払うのは選挙と同じです。消費者の皆さんは企業にサステナブルな取り組みを行うよう意見を言う権利があります。こうした意識を持つためには教育がとても重要であり、皆さんがこの状況を変える立場になるかもしれません」と語りました。聴講した学生からは、「ファッションを通じて社会貢献ができることを学び、啓発されました。自分1人の行動でも積み重ねれば大きな変化を生む可能性があると感じました」「ファッションと環境の関係性についての知識がなかったので、この業界の先駆者である稲垣さんの講義を受けとても勉強になりました」といった感想が聞かれました。

 

岩本教授は、「2022年度から開講している本授業は環境と社会との接点を考え学ぶことを目的としており、『この授業を受けたくて人間環境学科を志望した』という学生もいる本学科の特色ある授業の一つです。繊維産業の第一人者である稲垣さんの講義は、学生にとって貴重な経験になったと感じています。今後も企業やNPOなどでの実務経験を持つ方にご協力いただき、学生の学びの機会を創出していきたい」と話しています。