工学研究科の大学院生らが執筆した熱電発電機に関する論文が国際ジャーナル『Sensors』に掲載されました


大学院工学研究科1年次生の中島拓海さんと、同2年次生の星野光稀さん、山本久敏さん(指導教員=高尻雅之教授・工学部応用化学科)らがまとめた論文「P型およびN型単層カーボンナノチューブを分散させたインクを用いて和紙にペイントされた伸縮性と柔軟性のある熱電発電機」が、国際ジャーナル『Sensors』に5月6日付けで掲載されました。

 

高尻教授の研究室では、熱を電気に変換する熱電発電材料の研究を展開しています。今回掲載された論文は、優れた耐久性と柔軟性を持った熱電材料「単層カーボンナノチューブ」を活用した熱電発電機に関するもので、中島さんが執筆した卒業論文が元になっています。陽イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤をそれぞれ単層カーボンナノチューブとともに脱イオン水に入れて超音波分散を施し、プラスの電気を発生させるP型とマイナスの電気を生むN型のインクを作製しました。屏風状に折った和紙に2種類のインクを交互に塗布したものをヒーターの上に乗せ、ヒーター接触部分と非接触部分との温度差から発生した電気を計測。温度差64℃の時に10.4mVの電圧、0.21㎼の最大電力が出力されたことから、熱電発電機として機能したことを実証しました。

 

指導に当たる高尻教授は、「インクを塗布した和紙は燃えても有害ガスを発生させず、不要になった場合は細かく裁断して溶液状にした後、カーボンナノチューブと紙の成分を抽出してリサイクルすることが可能なので、環境への負担が少ない材料と言えます」と語り、中島さんは「学部生の時に研究していた内容が『Sensors』の目に留まり、今回論文掲載のオファーをいただけたことをうれしく思います。熱電発電機としての性能を伸ばすために、さらに検証を重ねていきたい」と喜びを口にしました。また、実験のデータ採取をサポートした星野さんと山本さんは、「論文掲載に向けて細かいデータを集めようと短期間で実験などを役割分担し、チームで研究を進められてとてもいい経験になりました」と話しました。