「IAEA国際スクール 原子力・放射線安全リーダーシップ」を開催しました


東海大学では2月19日から3月1日まで、国際原子力機関(IAEA)との共催で、「IAEA国際スクール 原子力・放射線安全リーダーシップ」を湘南キャンパスで実施しました。本スクールは本学とIAEAが2018年度に締結した原子力安全教育分野における実施協定に基づき実施するもので、今回で4回目の開講となりました。日本・アジア諸国の原子力・放射線利用に関わる若手・中堅の研究者・技術者を対象に、ケーススタディやゲーム形式の演習などを通じて、原子力安全のためのリーダーシップに関する知識やスキルを養いました。

 

 

IAEAのスタッフと工学部の教員らがファシリテーターとして運営に参画し、日本原子力開発研究機構、日本原子力産業協会の支援を得て参加者を募り、今回は日本およびアジア諸国から27名が受講しました。2月19日の開講式では工学部の山本佳男学部長とIAEAのシャヒド・マリック氏があいさつ。初対面の参加者同士が互いを知るためのアイスブレイクなどを経て研修を開始しました。期間中の27日には、ケーススタディとして「放射性物質の環境への漏洩への対応」について学び、グループに分かれて事故事象が発生するまでの登場人物の振る舞いについてリーダーシップの観点から検証するとともに、緊急事態に対する関わり方や行動、対処の仕方について討議するといったワークショップに取り組み、グループ発表して議論を重ねました。さらに、事故を起こした原子力発電所の責任者の立場に立ち記者会見を模擬体験。この記者会見では受講者たちが演じる地域住民や記者役も参加し、プラカードを掲げ声高に糾弾するなど緊張感のある雰囲気の中でロールプレイを行い、原子力の安全利用を担うリーダーシップへの考えを深めました。

参加者は2月28日まで湘南キャンパスで研修し、29日から3月1日にかけては東日本大震災で発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故について学ぶため福島県を訪問。福島県富岡町の「東京電力廃炉資料館」や、放射性物質に汚染されたごみの埋め立て処分について紹介する環境省の特定廃棄物埋立情報館「リプルンふくしま」、楢葉町にある国立研究開発法人日本原子力研究開発機構福島研究開発部門の「楢葉遠隔技術開発センター」などを見学しました。

インドネシア国立研究革新庁の研究用原子炉のオペレーター、カメリア・ハリド・ワリドさんは、「リーダーシップについての学びに特化したプログラムなので、日ごろの業務に役立つと考え受講しました。この研修は単なる座学ではなく、IAEAの講師の方々も一緒になってワークショップに参加してくれて実り多いものでした。帰国したら現場のスタッフたちと積極的にコミュニケーションをとるよう心掛け、快適な環境で安全を守る職場環境をつくりたいです」と手応えを語りました。医学部付属病院放射線技術科の診療放射線技師、高野晋さんは、「学内にいながら国際的な組織の研修に参加できるのは得がたい環境だと思い、自分が関わっているメディカルとは異なる分野から放射線の安全について学ぼうと参加しました。放射線の扱いについて医療の安全とリーダーシップは別ものと捉えてきましたが、今回の研修で総合的なカルチャーだと実感しました。英語漬けの研修で自分の英語力の再確認もできたので、この成果を職場に持ち帰り、同僚たちにフィードバックしてよりよい診療につなげたい」と今後の抱負を語りました。