情報技術センターでは気象庁やJAXAと線状降水帯のメカニズム解明と災害リスク分析を目指した共同研究をスタートさせました


東海大学情報技術センターでは今年5月から、気象庁気象研究所の「線状降水帯の機構解明及び予測技術向上に資する研究の推進に関する協定」に参加しています。そして本協定に基づいて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を交えた三者間で共同研究契約「全球降水観測計画(GPM)等の衛星データと地上観測測器による線状降水帯の機構解明に関する研究」を締結しました。本契約のもと、本学熊本キャンパスの屋上にJAXAの観測機材を設置。落下雨滴の反射波から降水量や雨滴落下速度を測定する「マイクロレインレーダ」や、照射したレーザー光の間を通過する降水の強度などを測定する「ディスドロメータ」で得たデータをもとに、線状降水帯を構成する積乱雲群等の内部構造に着目した観測を共同でスタートさせました。

 

大規模水害をもたらす要因の一つとして近年注視されている「線状降水帯」は、発達した積乱雲が組織化して線状となって停滞し、数時間にわたって同じ場所に強い雨を降らせます。2018年に西日本各地で甚大な被害があった「平成30年7月豪雨」や、20年に熊本県人吉地方を襲った「令和2年7月豪雨」を受けて、気象庁では昨年6月からメカニズム解明に向けた高密度集中観測や、スーパーコンピュータ「富岳」を活用したリアルタイムシミュレーション実験を開始。今年度からは、大学や研究機関との連携をさらに深め、集中観測による線状降水帯の発生・停滞・維持の機構解明を加速させています。情報技術センターは1974年の開設以来、衛星リモートセンシングをはじめ、地球観測や画像技術の先端研究を続けていることから、今回の共同研究に参画。中島孝所長(情報理工学部教授)や白水元助教(建築都市学部)、直木和弘技術職員らが中心となって、高密度集中観測に協力するとともに、豪雨災害発生前後のリスク評価・分析、災害防災研究を展開しています。

 

衛星リモートセンシング技術を活用した雲の成長消滅過程の可視化に成功した実績を持つ中島所長は、「本センターでは近年、大気・陸面・海洋・海氷の衛星観測に加えて、災害情報の共有・発信に関する研究にも取り組んでいます。本学は、線状降水帯が数多く発生する熊本県にもキャンパスがあるため、この研究を進めることで学生や教職員、そして地域住民の人命や財産の保護につなげたい」と語ります。また、集中豪雨に起因する水害等の災害防災研究が専門の白水助教は、「国や各自治体が持つ地形や河川、林班(森林区画)のデータも分析し、線状降水帯が発生した際の災害リスクを割り出して、SNSなどを通じて情報も発信できれば。また、各自治体が発出する避難指示や災害発生情報については、研究成果が科学的・客観的な根拠として適切な発令対象区域の指定や発令タイミングの判断に役立つことが期待され、災害から安全に身を守るためにも活用できると考えています」と話しています。