建築学科の山川教授らの研究業績が「ASHRAE Technology Award」の世界最優秀賞に選ばれました


建築都市学部建築学科の山川智教授らが取り組んできた「帯広厚生病院における先進的省エネルギー技術の実証」がこのほど、「ASHRAE Technology Award 2024」で世界最優秀賞を受賞。1月20日にアメリカ・シカゴで行われた表彰式に山川教授が出席しました。132カ国に会員を有する空調技術分野で最も権威のある米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)が主催する同賞は、省エネルギーや快適性、ウェルネスなどに配慮した革新的な環境建築を対象とした世界最大規模の技術賞です。山川教授らの研究は日本支部による国内選考で2位、アジア地区(Region XIII)選考で2位となり、アメリカでの最終選考に進出。新築医療施設のカテゴリーで1位となり、建物用途などで分けられた10カテゴリーの1位を集めた選考で世界最優秀賞(First Place and Award of Engineering Excellence)を受賞しました。全カテゴリーでの1位獲得は日本人では3回目の快挙となりました。

 

山川教授は日本ファシリティ・ソリューション株式会社、北海道厚生農業協同組合連合会、株式会社久米設計、芝浦工業大学、長崎総合科学大学とともに長年にわたって本研究に取り組んできました。「病院のCTやMRIなどの医療機器は24時間365日、大量の電気を使っています。この電気エネルギーは機器の稼働に使われたあと、大部分が熱エネルギーに変わります。これはスマホやパソコン、照明も同様で、スマホを使っているときに本体が熱くなるのはそのためです。この熱エネルギーの大部分は冷房や通風により屋外に放熱され、つまり捨てられています」と説明します。ペットボトル等のリサイクルが当たり前となった今も、エネルギーは1度使っただけで大部分が捨てられています。帯広厚生病院では、これらの熱エネルギーを熱回収ヒートポンプで集めて、シャワー等の給湯や暖房に活用しています。山川教授はこれを「リサイクルエネルギー」と命名し、実証や普及に取り組んでいます。「使われたエネルギーは消えて無くなるわけではなく、エネルギー保存の法則により、熱エネルギー等に変換されています。そのため、都市や建築には大量の熱エネルギーが存在しており、ほぼ全て捨てられています。エネルギー“消費”という言葉が誤解を生んでいると思うので、エネルギー“利用”という言葉に改め、『エネルギーはリサイクルできる』ことを広めていきたい」と語りました。

 

本研究は、「2022年度(令和4年度)省エネ大賞」の「省エネルギーセンター会長賞」を受賞するなど、国内でも高く評価されてきました。山川教授は、「世界一の知らせを聞いたときは本当に驚きました。また同時に、リサイクルエネルギーへの世界の期待の高さを感じました。今回の受賞を機に、リサイクルエネルギー研究会を立ち上げ、身近なリサイクルエネルギーや再生可能エネルギーを活用して、化石燃料を使わないサスティナブルな社会の実現に貢献していきたい」と話しています。